東洋タイムス

電車内での通話はご遠慮ください

2019/06/12

深夜の電車に乗って周りを見渡すと半分以上の人たちが何やら携帯電話をいじっています。今ではあまり珍しくもない風景です。

 

ゲームをやる人、SNSを見ている人、Webサイトを見ている人など様々です。私もメールが気になって、ついいじってしまうので仕方のない時代なのかと特に悪い気はしません。

 

その時、かなり大きなボリュームで電話の着信音が響き渡り、周りの人も驚いた感じで一人の男性に目を移しました。70歳くらいと思われる男性が、悪びれる様子もなく鞄から電話を取り出したのです。てっきり電話を切るかと思いきや、電話に出て話し始めました。

 

酔っている様子でしたので声も大きく、周りの乗客も一斉に彼の方を見ていました。誰一人と注意することもなく不穏な雰囲気の中、誰か注意しろよ的な感じが続きました。私のすぐ目の前にいたこともあり、思いきって男性の肩をポンポンとたたきました。

 

男性は電話の会話を一旦止めて、私に向かい「なに?」と聞いてきたので、「迷惑ですよ」と伝えました。ちょうど電車は駅に到着し、扉が開いた途端に男性は気が狂ったかのように私のネクタイを掴み、大きな声で「表に出ろ~」とホームに引っ張り出されました。「お前は何様だ!!」「俺を誰だと思ってんだ」「お前に言われる筋合いはない」などと大人気ない言葉ばかりを大声でわめき散らしていました。私は呆れて物も言えず、反論することもなく様子をみていました。

 

 

 

しばらくすると駅員が駆けつけてきて、その男性を何処かへ連れて行ってしまいました。駅員は私に事情を聴く訳でもなく一人ポツンとホームに残されてしまいました。このむなしさを誰にぶつければいいのでしょうか?

 

 

 

 

(2016年1月発行 社外報『和』第2号より)